朝鮮寺刹史料凡例

關燈
朝鮮の寺刹は新羅高勾麗百濟三國鼎立の時より高麗朝の時代まてに多く建設せうれ當時人心を感化い政治を稗補いたろ曆史を有すうも從來其の史籍の備はうさろは夙に識者の遺憾シすろ所なり本書は即ち其の遺缺を補ひ他日寺刹史を修ちろ資料シいて之を采輯せるものなり。

    朝鮮の寺刹を莊嚴すろ堂塔伽藍は啻に曆史の證徵シこて價值あるのろなうす古代に於ける美術工藝上の智識を集中せろ遺物シこて價值あるこシは夙に識者の認むる所なれは本書は或る塲合に於て朝鮮古代美術の說明書たるこごを疑はす。

    本書は各寺刹に現存する碑文扁額其の他古文書類を采輯せシものなれは文體一樣なうす且つ碑文古文書の中には新羅薛聰の創意に系る吏讀(漢字を以て方言を記せるもの)の用語を插入せるものありて難解不讀のものありご雖都て原文を存い敢て之ふ改めす。

    碑文扁額中磨滅剝落こて字體の知れさるものは△印を附こ或は以下阙畧ご标記こ以て脫字にあうさるこごを明かにせり。

    各道府郡より送附に系る本書の材料中臨寫の誤謬ご認むるものなきにあうすご雖一々之を照會こて核查を求むるに遑あうるさを以て檢校厘正は都て他日に讓るこそ,せり

    本書編纂の業は明治四十三年八月材料采集に着手こ明治四十四年三月までに蒐輯こたるものを查理こて之を印刷に附せり。

    寺刹史料の采集は仍ほ之を繼續こ他年を期こて大成せむとす。

    明治四十四年四月三日

    編者 識す